東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 坂本・松村研究室
研究会

(1)コンバージョン研究会

都心のオフィスビルの空室率は増えていますし、これから益々増えることが予想されています。一方都心居住へのニーズは年々高まりつつあります。この二つを考え合わせた時、空いているオフィスビルを居住用施設にコンバージョンする(建替えずに転用する)という発想がリアリティをもっていることに気付く筈です。
2001年秋に始まったこの研究会は、研究室のメンバーだけでなく外部の研究者、実務家約40名も加わって活発に活動しています。大きくは、1.都市政策・都市経営・都市居住に対するコンバージョンのインパクト、2.コンバージョンを成立させる事業モデル、3.コンバージョンに相応しい産業モデル、4.具体的なコンバージョン・イメージと必要な新開発部品が研究テーマになっています。
2002年10月には、この研究会で行った海外事例調査結果を中心にまとめた「コンバージョンによる都市再生」(日刊建設通信新聞社)が出版されました。

(2)居住環境権利関係研究会

長期に亘る居住地の健全な運営や豊かなコモンの形成には、それを成立させる法制度や社会的慣習がなくてはなりません。「美しい町並み」などというものも、単なる意匠の問題ではなくそれを成立させる法制度や社会的慣習の問題と捉えた方が、リアリティに肉迫することができます。そうした関心を共有する千葉大学安藤正雄研究室、東洋大学秋山哲一研究室、九州大学菊池成朋研究室、新潟大学黒野弘靖研究室、椙山女学園大学村上心研究室と一緒に数年前から続けている研究会です。
2002年初めから、「住環境の分水嶺−日本の住宅制度はどこへ行く」という連載を「住宅建築」誌上で継続しています。

(3)楽隠居インフィル研究会

高齢化の進行の中で、既存集合住宅の住戸内を効果的に改造し、高齢者が生き生きと暮らしを楽しめるようにするための、インフィル・システムを開発しようという研究会。安藤正雄氏(千葉大)、石塚克彦氏(積水ハウス)、大原一興氏(横浜国大)、忍裕司(竹中工務店)、後藤義明(積水ハウス)、小畑晴治(都市公団)、村口峡子(駒沢女子大)等外部の研究者、実務家と一緒に2000年から進めています。2001年には実際に色々な部品を試作し集合住宅2住戸を改造施工しました。2002年には解体・回収したこれらの部品も用いながらまた新たなモデルを試作・評価する予定です。

(4)SIP(Stock Improvement Project)研究会

研究室内部の研究会。居住地権利関係研究、楽隠居インフィル研究の他、既存住宅に関する研究テーマについて話し合う会。

(5)ファサードエンジニアリング研究会

元々柔軟性に富んだ新しい部品設計・部品生産のあり方を主題としていた研究会が、ファサード関係に的を絞る形で2002年より再編成されました。
現在の主たる関心事は二つあります。ガラスを用いた透明なファサードが寒冷な欧州において近代建築のシンボルのようになるには、その背景に空調技術の発達があったはずですが、このファサードと設備技術の関連という観点から、少し新しい近代建築史を語れないか、それが一つ目の関心事です。一方、近年では透明なファサード自体を、省エネ型の空調・換気システムの一部としてデザイン、エンジニアリングした設計例が増えていますが、この二つの分野の新しい形での統合は新しい職能や新しいデザイン手法の展開を予感させます。こうした事柄の欧州での現状と日本での展開可能性が二つ目の関心事です。

(6)宇宙建築研究会

研究室内に宇宙建築を専門とするメンバーが二人現れたことから2002年になって立ち上がった研究会。外部からこの道の専門家である村川恭介さん、大串純さん、野崎健次さん、そしてこの問題に関心を持つ慶応大学の池田靖史さんが参加し、宇宙ステーション、宇宙ホテル、火星居住施設の建設技術、建設可能性、更には宇宙構造物から地球上建築への技術移転等について検討を始めています。アメリカ航空宇宙学会宇宙建築ワーキンググループ等内外の関連機関と連携を取りながら、新しい開発研究プロジェクトを立ち上げたいと考えています。盛り上がってます。

(7)世界の在来構法研究会

「在来構法」即ちそれぞれの地域でごく一般的に当たり前のように用いられている現代建築構法のことです。例えば20世紀後半になってやっと世界中に本格的に普及したと考えられる典型的な近代建築、鉄筋コンクリート造の建築においてすら、今では各地に独特の在来構法が定着しています。このような近代的な構法においてすら地域性が生ずるのはなぜなのか?また、現にどのような地域による在来構法の違いが見られるのか?興味の尽きないテーマです。
この研究会では、歴史的な観点、生産組織に関する観点、経済事情に関する観点、社会的な規範に関する観点等から、多角的にこの在来構法の地域性或いは普遍性の説明できるようになりたいと考えています。現在は、アジア地域の鉄筋コンクリート造の在来構法を主たる題材として研究しています。

(8)建設経営研究会

建設業の近未来像に関わる問題を研究しています。建設業におけるナレッジマネージメントのあり方、日本におけるCM業務の実態、IT技術を用いた新たな建築生産環境、建築生産における日中関係の将来像等、メンバーそれぞれのテーマを持ち寄り、意見交換、進捗状況報告をする中で、より大きな全体像を描き出せればと考えています。

(9)木造住宅の設計機能研究会

設計業のビジネスとしての成立の仕方とそのあるべき姿を追求する目的で設けられた「設計業の未来像研究会」が、対象を木造住宅の場合に限る形で展開した研究会。木造住宅の建設に必要とされる設計機能とは何なのか、それはどう変わってきているのか、どう変わっていくのか、誰が担い得るのか等々について、今は設計事務所、工務店等へのインタヴューを積み重ねる中で、考えていこうとしています。当面は、昔から言われていながら現実には決して広く展開しない設計事務所と工務店の地域内連携について、現代或いは近未来における可能性が、一つの重要な関心事です。

(10)ライフスタイル研究会

建築殊に住宅の生産を考える上で、人々のライフスタイルに関するしっかりした認識を持つことは、今や必須のように思います。大阪大学の鈴木毅研究室や武庫川女子大学の西田先生とのコラボレーションによるこの研究会は、特に研究の着地点を想定せず、ライフスタイルに関する知見を増やし、自由に考えるために設けられました。メンバーそれぞれの観点から調査活動を行う一方で、ライフスタイルに関して造詣の深い外部の方々を講師に招き、ディスカッションする活動を続けています。この研究会で考えをめぐらせている事柄については、逐次(社)住宅生産者団体連合会のHP内に公開しています。自由に開かれた形でライフスタイルに関する思考が交換され深まっていけばと考えています。

(11)伝統木造研究会

宮大工の技術を中心に展開してきた伝統木造建築物。こうした技術の工学的な評価を可能とすべく、伝統技術をこよなく愛する研究者・実務者の情報交換の場。重要文化財の耐震診断・耐震補強から、構造実験、地震観測の経過報告などを行っています。

(12)高層木造研究会

町中にあふれるRC造とS造の建物。木造では建てられないのか。ふとした疑問から始まった高層木造建築の可能性。10階建てのオフィスビルの試設計をはじめ、夢は超高層木造建築。30代の建築家、構造設計家を中心に、高層木造を建築可能にする技術を追求しています。


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